序章 −鮮烈美・豪渓
吉備路の紅葉は透明感あふれる淡い水彩画の美しさ。赤橙黄色と油絵のように重ねあわされたペルシャ絨毯
のような重厚な紅葉もよいが、日本人だからこそ理解できる控えめな吉備路の紅葉美もぜひとも味わっていた
だきたい。吉備路の紅葉といえば、渓谷と奇岩・紅葉がおりなす自然美に圧倒される景勝の地『豪渓』がある。
清涼感たっぷりの空間に存在するものは、急流と岩がせめぎ合う音と鼓膜をうつ風の音のみ。風にまかれ紅葉
が吹雪のように舞い落ち渓流に飲み込まれるさまは鮮烈であり、見る者の心を捉えて離さない。
→サンロード吉備路からお車で約25分。紅葉見頃:11月中旬〜下旬
※今年は残念ながら土砂崩れの影響で豪渓への立ち入りが許されなかったため、“吉備路紅葉狩り巡り”のルートには豪渓は含むことができなかった。


第1章 −静寂美・宝福寺
【鐘楼(しょうろう)から見た宝福寺 仏殿】
 
【紅葉を抱えた朱色鮮やかな三重塔】
 
【宝福寺紅葉アップ】
今夏猛威をふるった台風。晴れの国といわれ天災とは縁遠いこの岡山の地も深刻な被害に見舞われた。その影響は紅葉にとっても甚大で、葉がこすれあい傷つき色づく前に茶色く変色、例年通りの原色の鮮やかさを楽しむことは難しくなっている景勝地が多い。しかしこの宝福寺は山あいに立地しているため台風の影響が軽微で例年通りの彩を楽しむことができた。宝福寺−世界10大文化人にも選ばれている雪舟が幼年期に修行したお寺として有名(雪舟が世界10大文化人に選出されている話は以外と知られていない。日本人では彼だけであり、その他はハイネやモーツァルトなど)。
鎌倉時代から臨済宗の禅寺として栄え、禅宗様式の七堂伽藍が完全に残されている地方では珍しい巨利でもある。紅葉の特徴としてはその種類の多さ(約20種類の紅葉や楓などが植えられている)が挙げられ、長期間、彩艶やかな紅葉を愛でることができる。私のお勧めのスポットは鐘楼から眺望する紅葉。凛とした落着いた佇まいの仏殿と清楚なしかし鮮やかな紅葉とが生み出す静寂美は見るものを感傷的な気分にさせる。仏殿をとりまく紅葉は、燃え盛る炎のように錯覚させ、全ての浮世を焼き払い、時間が経つのさえ忘れさせてくれる。その他、朱色の三重塔は紅葉と同化し、その紅を更に際立たせている。
通常紅葉の葉は七股(葉が7つの突起で成り立っている)が一般的であるが、宝福寺の紅葉は五・七・九と三種類の葉がある。九股の葉をもつ木は3本あるといわれており、その木を探しながら紅葉狩りを楽しむ、それもまた一つの趣向である。
→サンロード吉備路からお車で約15分。
紅葉見頃:11月上旬〜下旬。上記にも記したように比較的長期間、紅葉を楽しめる。

第2章 − 造形美・近水公園
【小堀遠州流の庭園−吟風閣を望む】
 
【庭園の錦鯉の紅様(こうよう)】
近水園は足守藩主 木下家の居館に設けられた大名庭園である。木下家は豊臣秀吉の妻ねね(後の北の政所)の出所であり、2万5千石という小藩ながら代々教学面に力が注がれていた。その影響か適塾で有名な緒方洪庵や白樺派の作家木下利玄などの文化人を輩出している。例年なら大名庭園と紅葉がおりなす造形美を楽しむことができるのだが、今年は台風の影響で紅葉せず、ごらんの通り殺風景な絵となっている。しかし、丁寧に造りこまれた小堀遠州流の園池と紅葉が調和した庭園は本来見事であり一見の価値はある。近水園は桜・牡丹の名所としても有名なので、春・初夏も訪問して損はない。足守はその他、江戸時代の伝統的家屋を往年の姿のままとどめた家屋が約100戸あり、そのしっとりと落着いた町並みを観賞できる。


→サンロード吉備路からお車で約15分。
紅葉見所:11月中旬〜下旬。
桜・ボタンの名所としても有名

第3章 − 壮厳美・龍泉寺
【艶やかな衣装をまとった龍泉寺 本殿】
 
【神秘的な雰囲気を醸し出す龍王の瀧】
日蓮宗最上教派の本山。日蓮宗と稲荷信仰が一体となった神仏混合の仏が主となった祈祷の寺として全国的に熱心な信者が多い。シンボルである『龍王の瀧』からは常時冷んやりとした清水が噴出しており、毎年7月の第4日曜日には【お瀧まつり】が開催されている。実はこの龍泉寺、吉備路地方の隠れた紅葉スポットでもある。本殿の周囲には紅葉や銀杏の大木があり、それらがシーズンには赤瓦の本殿に色とりどりの衣装をまとわしている。また、境内をぐるっと一周する形で遊歩道があり、それに沿って紅葉の幼木が植林されている。現在でも、小さいながらも健気に葉を真っ赤に染めた紅葉を楽しむことが出来る。純粋でまじりっけのない赤だ。
後10年もすれば、大人に成長したさまざまな感情を吐露した紅葉林の遊歩道を楽しめるだろう。

→サンロード吉備路からお車で約20分。
紅葉時期→11月下旬
遊歩道にある紅葉の幼木は11月上旬より楽しむことができる。


吉備路紅葉狩り巡りルート
『 サンロード発 → 宝福寺 → (豪渓) → 近水園 → 龍泉寺 → サンロード着 』
ゆっくり紅葉狩りを楽しんでも1周2時間もあれば周遊が可能。豪渓に立ち寄る場合は宝福寺と近水園の間に立ち寄るのがベストルート。それでも1周3時間みておけば、十分吉備路の紅葉を堪能できる。
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